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縁猫〜縁側で猫と暮らしたい〜

漫画・本・映画等好きなもの・気になることについて書き留めて共有する場がほしいなあと開設しました。将来は書斎と縁側のある家で猫と暮らしていたいです。

浮世絵販売が行われていたので、立ち止まって見てみた(1)

日曜日(余暇を過ごす大学4年生に曜日感覚はないが)、従兄妹と「この世界の片隅に」を観るべくテアトル新宿にやってきていました。

このアニメーション映画がとても優しく期待を上回る良作で、その後に食べた中村屋のカレーが美味しかったことも触れたいところだけれど、本題は浮世絵販売での出来事。

従兄弟とさよならした後向かったのは、
紀伊国屋書店新宿本店。

ここは、日本全国屈指の売上を誇る本屋さんで、書店でのアルバイト時代に見た日販の書店売上ランキングでは紀伊国屋書店が1位を飾っていました。

春先に早稲田の演劇館で行われていた「あゝ新宿 スペクタルとしての都市展」では、新宿御三家のひとつとして名を連ねていた由緒ある場所。

と、そんなことは知っておきながら実はしっかり見て回ったことがありませんでした。なんとなく広くて疲れそうだと思っていたんです。笑

 

そこで、今日は映画ついでに資格試験のテキストを買おうとしていたので「いい機会だな」と思い立ち、向かってみました。

カラーコーディネーター検定1級〈商品色彩〉が大学の生協にも地元の本屋さんにもなかったんですよね…。こういう資格のテキストはやる気を出したいのでAmazon等のネットでは買わない派です。ましてや中古買わないです。

そんな時に頼れるのが大手書店本店の品揃え、ということでばっちり在庫ありました。

 

1階から8階をぐるっと回った後、目当てのテキストを購入して退却する予定が目に入って来た。それがタイトルにある例の浮世絵です。

 

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葛飾北斎の『凱風快晴』)

 

8階分の店内を回ったヒールの脚はくたくた。本当なら立ち止まっていないでさっさと次の予定に向かいたい。

けれど茶掛かった赤富士に、相反するような空の色。本当なら赤の補色は緑で、せめぎあってチカチカするような配色。なのに同一のトーンが調和させている。

と、一応資格をとっているカラーコーディネーター検定2級までの知識でどうして目についたのかを考えているうちに、立ち止まっていました。

 

そこに浮世絵を扱っているおじさんが話しかけてきたのが、事の始まり。

 

職人の巻

まずは職人さんのお話から。「今はどこも跡継ぎがいない」とは人事でなく…展示されていた浮世絵を作っている彫師・摺師さんも少なくなっているそう。

※浮世絵:絵師(えし)・彫師(ほりし)・摺師(すりし)の三種類の職人から作られる伝統工芸。

彫師・摺師さんは修業期間も長いので経済産業大臣認定の国家資格を持つ伝統工芸士になった頃にはお年寄り。そこから弟子をとる元気も人数もいないんだとか…。「跡を継いでよお」と言われたものの、笑って受け流すには話題が重たかったネ。

 

ぐぐっていたら浮世絵プロジェクトなるものを見つけたので興味があったら☟

www.ukiyoeproject.com

 

 顔料の巻

赤富士に話題を戻すと、今度は顔料と染料のお話をしてくれました。

顔料と染料はどちらも色を付けるのに用いますが、水や油に溶けないものを顔料、溶けるものを染料と呼びます。

浮世絵は基本的に顔料が使われ、顔料にない色を使う時に染料を使うことがあるとのこと。

どおりで、店頭に並んでいる浮世絵にはくすみがかった色合いが多い。浮世絵に使われている天然鉱物顔料は自然界にある鉱物が主な原料となるので、どこか柔らかい印象を与えてくれます。

特に、この赤富士に見られる赤い部分。これは、摺り立ての頃の方が鮮やかな赤で、時間が経つにつれてくすんだ本来の色になるそう。

これは聞かないと知らずに終わりそうでした。

早稲田の巻

ここらで「どう?買わない?」と商売をしてきたおじさん。話を聞いた上で申し訳ないなあと思いながら、今すぐ買う気は起こりませんでした。

「来年社会人になったら出直しますねー。」とそろそろ面白い話も聞けたことだし去り際かなと思ったのですが話は続きました。

「学生さんだって関係ないよ。今日も新宿の向こうの大学の子が買ってったよ。」「ほら、スロープがあるとこの文学部。」

どこに何大があるなんて話には疎い私ですが、なんとなく母校かなと検討がつくので聞いてみました。「あー早稲田生ですかね。私もなんです。」

「そうそう!早稲田はいいよね、興味の方向が雑多だから!」急に堰を切ったように勢いづくおじさん。聞いててわかったんですが、商売柄、文化人や読書人にはうるさいみたいで。学生の系統を語り始めます。

「知ってるかい?大学生協で一番本が売れるのは早稲田なんだ。自由で色んなことに興味を持つからな、本を読むんだ。慶應上智中央みたいなミッション系は全然だ。化粧に金をかけるから本を買わない。法学の本しか売れないよ。うんたらかんたら」

しまいに「早稲田と法政は、化粧に金をかけないからな!」と。

それまではふむふむ、と浮世絵の話を聞いていましたが、大学の話となると気まずいですね。笑

生徒数や学校の規模は関係ないよと言うのでそこは気にしないとして、いまだに早稲田ってそういう割合が高いのでしょうか。肌感を頼ってもスッピンの子よりおしゃれで可愛い子が目に入っているだけな気がしてなんとも言えず…「早稲田でも人によりますからねー」と答えるしかないテーマです。

このおじさん、悪気があるようではなく、むしろ文化を好む学生が多い(らしい)早稲田を好いてくれている。若干の時代錯誤や早稲女差別を感じたものの笑、こっちも面白がりながら聞いていられます。

印刷と出版の巻

楽しくなってきたのかおじさん、今度は本が一番売れた年クイズをしてきました。「1960年代…?」

けれど気になる答えは聞けないまま、印刷技術が進んでポスターやら雑誌が作られるようになって、と話が流れます。

そこで私もマスコミ業界に進むんです、と話してみたら予想以上に食いついてくれ、そして心配されました。ネットが全部吸収しちゃうから、紙はダメなんだと。

浮世絵を売っているおじさんにそう言われてしまうと、少し…寂しい気持ちになりますね。

 

いわゆるファッション誌やマンガ誌、情報誌などの雑誌が、心配どころです。各雑誌ごとに主旨が違うので一概に言えませんが、やはり情報を根源にしている分野が気になります。

私はマンガ好きなので、「マンガは作家ありきなので、デジタルになってもマンガはマンガです。」と啖呵をきる形になりましたが…。笑

マンガ好きとしては黙っていられない議題です。

 

と、終いにはおじさんに電通から始まるマスコミ業界の話をされ、「死ぬ前にやるべきことがあるんだから死ぬなよ!」とエールを送られてさよならしました。

 

日曜の夕暮れ、濃い30分だったなア。

おじさん、結局買わなかったのにありがとね。

 

出版と印刷とデジタルの未来。

浮世絵をきっかけに、よくよく考えてみました。

 

(2)に続く